新説ドラゴンクエスト3 第115日目
115日目 12月22日
夜が明けてネクロゴンドの奥地へ向けて行軍を再開。昨日同様トロルやミニデーモンの襲撃に苦しめられたが、ついにネクロゴンド山脈のふもとにたどりつき、噂にきいていたさらなる奥地に向かうネクロゴンドの洞窟を発見。この洞窟を抜ければバラモス城を望めるところまで行けるらしい。
(行くしかない)
セメントは勇を鼓して洞窟に潜入した。1階は魔族の彫像が立ち並ぶフロアで、敵に出会わず通過できたが、階段を上がった先が通路が続くフロアで、探索を続けるうちに敵に遭遇した。トロル、ミニデーモン、六本の腕を有する地獄の騎士、緑色のホロゴーストの混成軍。セメントはやっかいそうな地獄の騎士に向けて鞭を振るったが一撃では倒せない。そこへホロゴーストが即死呪文を唱えた。過去この呪文を食らった時は飛びのいて波動をかわせたが、今回はまともに波動をくらってしまい、セメントは呼吸ができなくなってしまった。
(あ・・・・が・・・苦しい・・・死ぬ)
即死魔法命中。セメントはその場に崩れ落ちた。目の前が白くなってくる。セメントは砕けそうな意識をつなぎ止め、緊急信号呪文を唱えた。
セメントは呼吸ができない。じたばたともがき苦しむがだんだん意識が薄れてゆく。
「ごぼぼぼ」
セメントは口元から血交じりの泡を吹いて失禁した。
(本当にもうダメだ・・・・母さん、ごめんなさい・・・・)
不審そうに警戒しながら見つめるトロルとミニデーモンと地獄の騎士。ホロゴーストは勝ち誇った表情をうかべている。
次の瞬間、かろうじて救出魔法が発動した。セメントの体はどこかの一室に横たえられていた
「グボボボボボ」
死亡寸前のセメントを見た当直魔道士が蘇生魔法を唱えた。止まりかけていたセメントの心臓の鼓動が蘇り、自発呼吸も再開した。
(ハァ、ハァ、ハァ・・・・)
セメントの息づかいが元に戻るまで十数分を要した。
「ここは・・・」
「イシスの魔道士協会。緊急信号呪文を感知したのであなたをサルベージした」
当直らしい中年の女魔道士が説明する。
間一髪、救難信号が間に合ったらしい。
「悪いけど・・・請求書です。10日以内にゴールド銀行の窓口で払っておいてください」
先ほどの女魔道士が羊皮紙を手渡した。
「あまり無理を・・・しないでくださいね」
そのあとセメントはポルトガ港町の宿屋に転がり込んだ。即死魔法で敗北してしまったのは初めての惨事。息を止められてしまうので殴り倒される以上の苦しみ。
(ネクロゴンドは、噂以上の魔境だ・・・・・・)
8敗目を喫した女勇者セメントは一人旅の苦しさに嘆息した。
セメント・スターリー・エスプレッシーボ(16)レベル36
身長159センチ、体重63.5キロ、孤高の勇者。
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