WASオールスターリーグ戦(3)
(3)
「さて」
運営側は経済産業省の幹部2名と、内田をはじめとする広告代理店スタッフ4名、イベント運営会社の幹部4名という陣容だった。
「まずは興行スケジュールの大枠を決めたいのですが」
内田が用意した叩き台の案では、8月5日から19日まで、15日間の興行を全国各地を巡業する形で行い、全15戦のリーグ戦を行い優勝者を決めるというものであった。
「あきまへんな、2週間もうちの興行をエース抜きでやるわけには。日銭商売やから」
初老のWARS社長は強硬だった。WARSは大阪梅田の常打ち会場で月2回の定期興行で収益をあげていたので、主力不在での興業は回避したかったのである。他の3団体も
塩津社長の意見に同調したが、総当たりリーグ戦を開催して夢のカードを提供するという当初の思惑が崩れかねないと考えた運営側も反論したのでこれだけで1時間以上紛糾した。
「1日2興業の、昼の部と夜の部のダブルヘッダーではどうでしょうか」
選手の負担が大きいとSPZの杉浦社長が渋ったが、後のフロント組の3団体の代表はそれで日程が短縮できて、かつ自団体の興行日程を圧迫しないので同意した。確かに1日2試合というのは負担だが、駆け出しの若手ならともかく鍛え上げられた肉体と精神を持つ選手ならできないことはない。現にインディーの中堅レスラーは昼は後楽園、夜は横浜で試合に出るというのは良くある話である。
けっきょく最初の打ち合わせでは興行日程だけ決まって終わった。
8月12日(日)神奈川・横浜スペシャルホール 第1戦・第2戦
8月13日(月)北海道・どさんこドーム 第3戦・第4戦
8月14日(火)名古屋・しゃちほこドーム 第5戦・第6戦
8月15日(水)広島・若鯉球場 第7戦・第8戦
8月16日(木)福岡・九州ドーム 第9戦・第10戦
8月17日(金)大阪・難波パワフルドーム 第11戦・第12戦
8月18日(土)宮城・仙台北アリーナ 第13戦・第14戦
8月19日(日)東京・新日本ドーム 第15戦・第16戦(決勝戦)
試合開始時刻:昼の部12時、夜の部18時
お盆の時期の大きい会場8連戦、ビッグマッチには不向きな時期だが、夢のカードとなると話は別だろう。さっそく政府関係者を通じて会場は押さえられた。一部プロ野球の日程とバッティングするところが出てきたが、政府関係者の巧みな根回しによって日程調整が図られた。
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