2022年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 稀勢の里伝説 | トップページ | 20190126 »

2019年1月20日 (日)

WASオールスターリーグ戦(2)

(2)
あくる日、大手広告代理店の「個人消費促進プロジェクト」の担当、内田は徹夜で作った企画書をもとに主要女子プロレス4団体の事務所を回ったが、結果は芳しくなかった。
「2週間も自前の興行を休みにはできない」
「やるのはいいが、自分のところの選手を優勝させるという確約がなければ駄目だ」
「慣れない他流試合で主力選手が負傷してしまうと今後の興行に影響する」
「うちは他団体とは交わらない。初代社長の遺訓だ」

「断られたで済むと思うか!ボケが!」
経済産業省の幹部は内田を叱咤した。
「ですが・・・」
「国家権力に逆らうことなどできないのだよ。まして相手はたかがショープロレスの会社だろう」
「しかし、どうやって交渉の突破口を開けば・・」
「頭があるんだろう、少しは考えろ」

しかし交渉は進まなかったので、経済産業省の幹部は財務省のつながりを頼み、主要4団体に「オールスター興行に協力しないと税務調査を徹底的に行うぞ」という恫喝に近いことを行った。プロレス興行会社は往々にして金の管理にルーズでたたけば埃は出てくるのであって、4団体は渋々ではあるものの主力選手の参戦を大筋では承諾するに至った。

2月下旬、都内高級ホテルの会議室に4団体の関係者が集められた。

・国内最大手の女子プロレス団体、新日本女子プロレス
「藤野です、宜しくお願い致します」
創業70年余りの歴史を持つ日本最古のプロレス団体。純プロレスとエンターテインメント性を融合させた興行スタイルと緻密なマーケティング力で他社の追随を許さない。直近は新エース、マイティ祐希子に人気が集まり、何度目かの黄金期を謳歌している。新宿に自社物件の本社ビルを構え、毎年しっかりと利益を出している。この日の打ち合わせは渉外部長の肩書を持つ男性スタッフ、藤野が出席した。

・過激なスタイルで根強い人気の女子プロレス団体WARS
 「営業統括の塩津です。ほな、よろしく」
創業40年と後発ながら、大阪吹田の雑居ビルに事務所を構え、関西を中心に興行を行っている女子プロレス団体。女子団体の枠を超えていると評される荒々しいスタイルと、反則・凶器も辞さない抗争図式で人気を集める。直近では大型凶暴エース、サンダー龍子が頭角を現してきたものの、経営陣が弱くどうしても日銭商売の域を脱せず、安定して利益を出せず財務基盤も脆弱。この日の打ち合わせは2代目社長の塩津みずから出席した。

・最近急成長してきた女子プロレス団体、ソウルジャー
「ソウルジャーの田野倉と申します。どうぞよろしくお願いします」
創業5年と最新鋭ながら、近年日の出の勢いで勢力を伸ばしてきている。前身は10年くらい前に小売業チェーンが大金を投じて立ち上げたVGというプロレス団体で、経営不振に陥り、一時活動停止に陥ったが、アパレル大手が資本を投入し、新しいプロレス団体「ソウルジャー」として再出発を切った。徹底したルックス重視の採用で当初は業界内の地位も低かったが、優秀なコーチ陣を採用し超科学的トレーニングで武藤めぐみらエース級の選手を鍛え上げ、最近は首都圏興行は軒並みソールドアウト。埼玉県戸田市に自社ビル兼道場を構える。この日の打ち合わせは執行役員総務部長の肩書を持つ男性スタッフ、田野倉が出席した。

・横浜のお嬢様プロレス団体、SPZ
「巡業部の杉浦です。よろしくお願いします」
創業24年と比較的後発ながら、大手IT企業のエスピーソリューションがバックについており、財務は健全で横浜戸塚に自社ビルの本社も構えている。興業は関東を中心にしているが九州や東北北海道も定期的に巡業を欠かさない。基本的には打撃投げ関節のスポーツライク路線が売りだが、ある程度ルックスや健康的なお色気も初代社長が重視したため、地方巡業では程々のショープロレスもこなす。ここ数年は南利美、草薙みこと、伊達遙の3大化け物がしのぎを削っている。この日の打ち合わせは道場チーフコーチの元レスラー、杉浦美月が出席した。

« 稀勢の里伝説 | トップページ | 20190126 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。