WASオールスターリーグ戦(36)
(36)
長かったリーグ戦も公式戦最後、新日本ドーム大会昼の部。
決勝戦出場権を得る2人は誰ぞ。
○武藤めぐみ(18点)(9分40秒、エビ固め)B上原(11点)●
※雪崩式パワーボム
休憩明けの試合。武藤めぐみはここで勝てば優勝争いの可能性を残す展開なので絶対に勝たなくてはならない。ブレード上原はすでに可能性が消滅しているが、新女の古参選手の意地で武藤の猛攻を受け流してゆく。それでも武藤、ものすごい跳躍力を活かし、開始5分でネックブリーカーを決めて優位に立つ。それでもムーンサルトを転がってかわす等、ブレード上原も老獪な動き。ならばと武藤、コーナー最上段からダイブ攻撃を狙ったがブレード上原もコーナーに上がって、コーナー上で数秒のもみあいの末、雪崩式フランケンシュタイナーの態勢に。しかし武藤はこれは受けられないと踏ん張り、そのままブレード上原の両太ももを抱えてジャンプ。結果としてえぐい角度の雪崩式パワーボムのような格好でブレード上原、頭からマットへ。ブレード上原、思わぬ返し技に無念の3カウントを聞いた。
勝った武藤めぐみ、9勝6敗の勝ち点18でリーグ戦を終えた。他の選手の結果待ちだがまだ終了時点で決勝戦進出の可能性を残している。勝負どころでギアを上げるハイスパートプロレスの動きで存在感を出し、ソウルジャーの世界タッグ王者として合格ラインに到達か。
一方のブレード上原、5勝1分け9敗の勝ち点11でリーグ戦を終えた。新女のベテラン選手としていい動きを見せたが、後半戦で失速し、他団体のエース級には競り負けるなど勝ち点を積み上げることができなかった。
○B市ヶ谷(19点)(13分53秒、エビ固め)L内田(10点)●
※タイガードライバー
まだ決勝戦の可能性を残すB市ヶ谷が猛攻。しかしラッキー内田もソウルジャーの技巧派らしくグラウンド技を起点に攻め込んでゆくが、力ずくで振りほどいて立ち技に移行する市ヶ谷の破天荒なファイトスタイル。それでも間合いを取ったり場外エスケープを試みたり波状攻撃を許さなかったL内田だったが、10分過ぎに市ヶ谷の放ったコーナー串刺しラリアットで崩れ落ちてしまった。
(っ、腰が・・・)
やはりハードなシングルマッチの連戦でL内田の腰も悲鳴を上げている。チャンスと見た市ヶ谷はDDT、しかしカウント2.ならばと拷問コブラツイストでギブアップを迫ったが、L内田もなんとか耐えてロープへ。
「オーホホホホホホ」
市ヶ谷様、高笑いの後あえて乱雑に落とす受け身の取りづらいタイガードライバー。これで頭を打ってしまったラッキー内田は無念の3カウントを聞いた。
ビューティ市ヶ谷、8勝3分け3敗1両リンの勝ち点19でリーグ戦を終えた。この猛者ぞろいの中、3つしか負けず、かつフォール負けを喫したのはB上原戦のみというのはさすがという他ないが、G山本戦での暴走両リンなど確実に勝ち点を獲るという点ではやや甘さがあったか。
この結果、すでにB来島が19点を挙げているので、18点で公式戦を終えたマイティ祐希子、武藤めぐみの決勝戦進出の可能性は消えた。また、この後のメインに出る南利美の脱落も決まった。仮にメインの来島戦に勝って勝ち点を19に伸ばして来島、市ヶ谷に並んでも市ヶ谷が直接対決で来島と南に勝利しているため2位以内に入れないことが確定した。
(仕方がない。今回は私がジョバーという役回りだった・・・)
ラッキー内田、頭を抱えながら長い花道を引き揚げ、手早くシャワーと着替えを済ますやいったん会場を出て、裏口からハイヤーに乗り、行きつけにしている都内一流ホテルのロビーラウンジへ向かった。
けっきょくラッキー内田は5勝10敗の勝ち点10に終わった。自団体の興行に比べてわりとあっさり負けるシーンが目立ったが、ラッキー内田は自団体のシリーズへの影響を考え、勝ち負けにはあまりこだわらずリーグ戦の完走を第一義に考えていた節があったようだ。
○T龍子(20点)(11分45秒、エビ固め)C斉藤(10点)●
※スプラッシュマウンテン
ここまで勝ち点18で来ているサンダー龍子はここで勝てば可能性がつながるといった状況。一方のコンバット斉藤も完走者の中での勝ち点最下位は避けたいと、のっけから重い蹴りをサンダー龍子に入れてゆくが、サンダー龍子の耐久範囲を超えるものではなかった。逆に蹴り足をつかんでバッタンと倒したり、逆片エビに捕らえたりと優位に立つ。こうなってくるとコンバット斉藤は苦しい。何とか一撃を入れて動きを止めんとしたが、頭への打撃はきっちりガードしていくサンダー龍子。そして相手の攻め疲れを待ってラリアットでなぎ倒し、なんとパイルドライバーを3連発。これでコンバット斉藤はフラフラになってしまった。そしてフィニッシュはスプラッシュマウンテンを炸裂させ、コンバット斉藤を鎮圧した。
サンダー龍子、9勝2分け4敗の勝ち点20でリーグ戦を終えた。隙をつかれての関節技で南や氷室に不覚を取ったが、フォール負けは結城戦のひとつしかなかったのはさすがクレイジードラゴンといったところか。
SPZの核弾頭・コンバット斉藤は5勝10敗の勝ち点10でリーグ戦を終えた。重い打撃でリーグ戦をかき回したが、後半は蹴りに頼るファイトスタイルをトップ選手相手に対策されて勝ち点を伸ばせなかった。
○氷室紫月(20点)(1分50秒、リングアウト)G山本(14点)●
新日本ドーム大会セミファイナル。
仙台大会昼の部の伊達戦で顎にダメージを負ったG山本、一晩明けて頭痛と目まいの症状がますますひどくなっていったようで、「リタイヤも考えた」が、どんな形でもいいからこの試合を終えればリーグ戦完走になるので、テーピングを施しヘッドギアをつけてリングに上がった。もうまともにレスリングができないのでいきなり氷室に襲い掛かり、その流れで得意の場外乱闘に持ち込んだ。
場外戦が始まるやセコンドのM千秋が加勢。二人がかりで殴る蹴る。しかし氷室のセコンドについていた金森が落ち着いてM千秋を蹴りで鎮圧。
「ウガーッ」
グリズリー山本、本部席の机を持ち出し殴りかからんとしたが氷室も見切ってかわす。ならばとジュラルミンケースに手を伸ばしたが良く見ていた氷室、スピアータックルで凶器ダッシュを阻止、そして場外パイルドライバーを決めてそのあと氷室はリングに生還。この一撃で決定的ダメージを負ったG山本は起き上がれず、そのまま場外カウント20が数えられ氷室のリングアウト勝ちが宣せられた。
「良かった・・・」
氷室、勝ち名乗りを受けるや花道を引き揚げ、控室で手早く着替えとシャワーを済ませるや関係者口を出て、都内ホテルのラウンジへ向かい、盟友ラッキー内田と決勝戦の対策を練り始めた。
氷室紫月、この結果9勝2分け4敗の勝ち点20でリーグ戦を終え、メインの結果を待たずに決勝戦進出を決めた。ねちっこさとずるさと冷静さで勝ち点をうまくかき集め、誰もが予想しなかった決勝戦進出を果たした。
グリズリー山本、7勝7敗1両リンの勝ち点14でリーグ戦を終えた。実力派ぞろいのリーグ戦でも悪の限りをつくし、ジュラルミンケース攻撃、毒霧などでリーグ戦を大いにかき乱した。しかし終盤で伊達に倒されてからは失速し、優勝争いに割って入るには至らなかった。この結果、20点以上が複数名出たため19点でリーグ戦を終えていたB市ヶ谷の決勝戦進出の可能性も消えた。
「ま、仕方ありませんわね。得点争いは時の運もありますから」(B市ヶ谷)
そしてメインイベント。ボンバー来島VS南利美。本来このカードは休憩後に組まれる予定だったが、メインに予定されていたM祐希子VS伊達が流れたこともあり、勝ち点争いを考慮し急きょメインに回された。
ボンバー来島が勝てばボンバー来島と氷室が決勝戦進出。引き分けてもボンバー来島と氷室が決勝戦進出。ボンバー来島が負けた場合は氷室とサンダー龍子が決勝戦進出となる。
「嫌なタイプの相手だけど、自分のプロレスをいつも通りやれば負けない」(B来島)
「いきさつはどうあれ、新日本ドームのメインで試合できるのは光栄。あとはしっかりファイトするだけ」(南)
○B来島(21点)(23分7秒、体固め)南利美(17点)●
※延髄ナパームラリアット
「ウガーッ!」
試合が始まるや南利美がひたすら右腕攻め。要するにナパームラリアットを食らいさえしなければ負けることはないと判断したか。とにかく右腕を狙ってグラウンドでのアームロック、アームブリーカー、手を変え品を変え来島の右腕を攻め込んでゆく。そしてキーロックも披露。来島の顔が苦痛にゆがむ。
「ヌァオー」
ボンバー来島も執念でキーロックを掛けられた状態のまま南を持ち上げ、そのままマットに叩きつける荒技を見せた。のた打ち回る南。それでも起き上がってキックを右腕めがけ打ってゆく。このへん実にえげつない。
「ウオオー」
しかしボンバー来島も普段はやらない左腕でのラリアット。右ほどの威力ではないが正面から一発、後ろから一発。南をたちまちのうちに追い込む。
追いつめられた南は空中胴絞め落としで打開を図ったが、なんとボンバー来島、空中胴絞めを踏みとどまってこらえ逆に押しつぶす破天荒な返し技を見せた。南はこれで腰を少し痛めたか苦悶の表情。ボンバー来島、チャンスと見てラストライドを狙ったが南も懸命に踏ん張ってこらえる。ボンバー来島、痛む腕でダブルハンマーを何発か入れてついにラストライド炸裂!しかし南ギリギリで返す。
ならばとボンバー来島ジャーマンを狙うが南は回転エビで切り返す。カウントは2、南は荒い息をつきながら起き上がり、ボンバー来島にエルボーを乱発。しかしボンバー来島、ここで背後にさっと回り、痛めているはずの右腕で延髄ナパームラリアット炸裂!これで目の前が真っ黒になってしまった南は無念の3カウントを聞いた・・・・
ボンバー来島、勝つには勝って決定戦進出を決めたが右腕を押さえて苦悶の表情。決勝戦に暗雲が漂った・・・
ボンバー来島は10勝1分け4敗の勝ち点21でリーグ戦を終えた。出場選手で唯一の10勝。馬力と体格に物を言わせたファイト、そして延髄ラリアットとベアハッグが猛威を振るい、リーグ戦堂々の1位通過。
南利美、8勝6敗1分けの勝ち点17でリーグ戦を終えた。とにかく関節技で隙を狙う闘いで勝ち星を積み上げたが、一方で攻め込まれたときにはあっさり負けるいつもの悪癖も出て、最終戦で優勝争いから脱落した。
「まあ、大きな怪我なくここまで来れて、良かったわ」(南)
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